政府の働き方改革の一つに、同一労働同一賃金の規定を盛り込んだパートタイム・有期雇用労働法がある。2020年4月に施行される予定となっているが、最大の狙いは均等・均衡待遇原則をベースに正社員と非正社員の待遇差を解消するのが目的だ。
つまり、正社員と非正社員という立場の違いがあっても、同じように働いているのであれば、正社員と同じような待遇を非正社員も取る必要があるわけだ。
待遇差を解消しようとすれば、低い賃金で使ってきた非正社員の給料を上げる必要があるため、会社にとっては人件費増の負担になってしまう。施行が決まっているものの、問題点も少なくない。
■対応に苦慮する企業が多い
2019年4月から施行された残業時間の上限規制によって見過ごされてきたサービス残業についても、割増賃金を払うようになって人件費が増えている。同一賃金同一労働の法制化により、非正社員に支払っていなかったボーナスなども支給しなければならなくなる。
このように、今年・来年の働き方改革によって二重苦になっている企業は多く、ルールをすべて守ると事業の存続が難しくなる企業も出てくるだろう。
企業に関しては、働き方改革関連法の残業時間の上限規制に伴うコスト増や非正社員の処遇改善でダブルコストになる恐れもある。
■大手企業の対策について
来年の施行を控え、ブリヂストンやトヨタ、NTTなどでは施策を行っている。ブリヂストンでは国内の1300人の契約社員に対して正社員と同じ水準の夜勤手当を支給し、トヨタも非正規の従業員に対して家族手当を支給している。
NTTについても社員食堂で使える月額3500円の電子マネーや食券の食事補助を廃止し、仕事や生活面をサポートするサポート手当を支給する予定だ。このように、大手企業については以前から非正社員の手当を手厚く行っていた。
非正社員として働く人が増える中、正社員との格差を埋める声が増えるのは当然と言えば当然だ。その一方で正社員の成り手が少なくなることも危惧されている。