LGBTQ

日本におけるLGBTの権利について

今やLGBTという言葉は、誰もが知る言葉になりつつあります。LGBTを題材にしたドラマや映画、書籍なども多く販売されており、社会においてはLGBTが自由に生きられる社会を目指した取り組みなども積極的に行われています。

世界的に同性愛に対する風向きは強く、中には同性愛という理由で極刑になるような国もあるほどです。日本においても同性愛に対する差別はありますが、世界的に見るとそこまで厳しくありません。

歴史的に見ても日本は同性愛者に対して寛容的な社会で、明示的に禁止されていたわけではありません。同性愛は肯定的にみられていますが、現代に近づくにつれて欧米の文化が入ってきたことによって同性愛に対する見方が厳しくなった歴史もあります。

LGBTという言葉はどのように生まれ、そして現代におけるLGBTの権利はどのように作られてきたのでしょうか。今回は、日本におけるLGBTの権利について紹介していきます。

LGBT(エルジービーティー)とは?

LGBTとは、性的少数の総称になります、Lはレズビアン、Gはゲイ、Bはバイセクシャル、Tはトランスジェンダーの頭文字をとって名前がつけられています。

L:レズビアン 心の性が女性であることを認識して、その上で恋愛対象が女性の同性愛者を表す言葉
G:ゲイ 心の性が男性であることを認識して、その上で恋愛対象が男性の同性愛者を表す言葉
B:バイ自身の心の性に関係なく、恋愛対象が男性にも女性に向いている両性愛者
T:トランスジェンダー性自認と、身体的な性が一致していない方全般を指す

トランスジェンダーに関しては概念が非常に幅広く、心の性別と体の性別が一致しない人はFTM(エフティーエム)やMTF(エムティーエフ)、無性や中性として生きている人はFTX(エフティーエックス)やMTX(エムティーエックス)など細かく分類されています。

FTM(エフティーエム)女性から男性へ性別移行を望む人
MTF(エムティーエフ)男性から女性へ性別移行を望む人
FTX(エフティーエックス)生物学的な性は女性だが、自身を特定の性別だと自認していない、つまり「中性」あるいは「無性」だと自認している人
MTX(エムティーエックス)生物学的な性は男性だが、自身を特定の性別だと自認していない、つまり「中性」あるいは「無性」だと自認している人

LGBTは世界的な人権問題の1つでもあり、LGBTの存在を前提にした社会制度を導入している国もあれば、ひどい人種差別や人権侵害が続いているような国もあり、どのように対処すべきかが国によって異なっています。

日本でもLGBTを取り巻く社会制度は長期にわたって議論と対策が行われていますが、厳しい法制度はなく、差別や人権侵害などは今だに根深いものがあります。

日本の同性愛の歴史

日本の伝統的な民族宗教の神道や、日本における仏教、儒教などにおいては、同性愛や異性愛などを明示的に禁止していません。日本の歴史においては、同性愛は当たり前の事だと、肯定的にとらえられており、男色という独自の文化も発展していました。

男色というのは男性同士の恋愛を指す言葉ですが、男色の歴史はかなり古くて、奈良や平安時代には公家や僧侶の間で少年を相手にした男色が行われていました。男色に関する最古の記録は日本書紀で、この頃から同性愛は身近にある愛の1つとしてとらえられていました。

戦国時代になると男色がより盛んにおこなわれるようになり、男色としての小姓を抱える戦国大名はたくさんいました。これらは当時の文献の記録を見ても数多くあり、男色は野心家にとって格好の出世の近道であったともいわれています。

武田信玄や上杉鎌信など歴史的に有名な戦国武将も男色だった可能性が高いと言われており、戦国武将の手記などをもとにBL漫画が作られるような場合もあります。

1872年に日本では「鶏姦(けいかん)律条例」が発令され、鶏姦(肛門性交)を禁止する規定が設けられましたが、鶏姦の罰則そのものも厳しくなく、実際に罰せられるのは刑務所などで男色行為を行っていたものに限られており、この罰則について1882年にはなくなりました。

19世紀は世界的に同性愛者が厳しく批判されて、弾圧や迫害されるなどLGBTが厳しい状況に立たされていましたが、日本においては同性愛者に対する迫害や逮捕などの歴史はなく、政府が同性愛者を差別するような発言もほとんどありませんでした。

20世紀になると男色が衰退したことによって、同性愛者に対する差別が一部で行われるようになりましたが、これは、日本本来の文化ではなく、西洋の文化が日本に入ってきたことが深く影響しています。

日本にやってきた外国人の中には、日本の男色文化に対して否定的な言葉を残す人も少なくなく、こうした発言によって世界的に同性愛がタブー視されていることが知られるようになります。しかし、日本は歴史的に同性愛に対して寛容的な社会だったこともあり、厳しく取り締まるようなことにはなりませんでした。

女性同士の恋愛も珍しいものではなかったですが、男性に比べると女性の同性愛についての文献はそこまで多くありません。現代においても同性愛でクローズアップされやすいのは男性同士の恋愛で、LGBTでも性別によってとらえられ方が若干異なっています。

LGBTの人権問題

最近はLGBTフレンドリーやLGBTを支援する取り組みを行う企業などが増えており、以前に比べるとLGBTを支援する動きや流れは強まっています。

LGBTによる人権問題はさまざまなところで起こっていますが、特に教育や仕事、結婚などでは問題として顕在化しやすくなっています。ここでは、LGBTの人権問題について紹介します。

教育

自分の性的指向が他人と違うことに気付くのは、早い人だと幼少期ころからです。他人と自分は何かが違うと思っていても、それを口に出して言うことができない子どもはたくさんいます。

日本においては子どもがLGBTに関することで嫌がらせを受けていても、教職員に伝えるときは自分の運にかけるしかありません。これは、カミングアウトしても対応が教職員によって大きく変わってくるためです。

子どもの安全と健全な発達が、理解ある大人とそうでない人との出会いによって変わることがあってはなりなせん。このような状況が往々にして日本のセクシャルマイノリティの子どもたちをはじめ、自分の性的指向に疑問を抱える子どもたちの現実問題となっています。

政府は公式に認めてないものの、実際には政策や教員研修が不十分であることや政策を実施に移す制度が脆弱であることなどから、性的指向やジェンダー・アイデンティティを理由にいじめの標的にされるLGBTの子供たちがたくさんいます。

日本政府は、LGBTの生徒特有の脆弱性に着目した効果的ないじめ防止策を策定していません。LGBTの生徒たちのニーズに対応するとともに、教職員に言動の責任を取らせるための教育研修などもしっかり行っておらず、性的指向とジェンダー・アイデンティティに関する教育を行っていないことなどが、現在の教育現場におけるLGBT問題となっています。

嫌悪に満ちた反LGBTの言葉が、日本の学校において、ほとんどどこでも存在しています。LGBTの生徒も沈黙、自己嫌悪などに陥り、ときには自傷行為につながっています。生徒からも教師からも憎悪発言がいろんなところで見られる実態や欠如が相まっています。

ジェンダーアイデンティティと認めてほしいとする生徒や、性的指向やジェンダー・アイデンティティに基づく差別からの保護や生徒を学校が支援、配慮する場合においても、対応が一時的に過ぎないケースもあります。

また、学校ではジェンダーについてステレオタイプ的な考え方をしている人が大半で、ジェンダーが一致しない生徒が自分からジェンダーを自由に表現するのは困難です。

トランスジェンダーやジェンダーに不一致な子どもへの対応が、他の国に比べると日本ではかなり遅れています。日本の学校においては、制服が決まっていることや男女別の活動があるなど、男女の分離は厳密に行われていますが、このような状況や環境もトランスジェンダーの子どもたちの学校生活における壁となっています。

こうした状況を打開するためには、政府がすべての子どもに対して健康・情報・教育・意見表明の権利を保障する必要があります。

仕事

2020年、厚生労働省が国の事業において初めて職場のLGBTに関する実態を調査しました。

調査ではLGBTの40%、トランスジェンダーの50%が職場において困りごとを抱えているという結果が出ました。

性的マイノリティは雇用の現場において不利益を被りやすいことから、就業継続が困難になって心身に支障をきたすこともありますが、その一方で当事者の困難は周囲に見えにくいため、企業による取り組みはそこまで進んでない実態があります。

職場でカミングアウトしている人の理由としては、

・自分らしく働きたかった
・ホルモン治療や性的適合手術を受ける

職場でカミングアウトしてない人の理由としては、

・職場の人と接しにくくなるから
・差別、偏見などが怖い

などが主な理由となっています。

仕事におけるLGBTの課題 ①履歴書・スーツ

就職や転職するために最初に用意するのは履歴書ですが、これは正社員でもアルバイトでも同様のことが言えます。日本において全国規格化されているJIS履歴書には、氏名・住所・生年月日、性別などを記入する欄がありますが、特に性別についてはLGBTの大きな悩みの1つになっています。

履歴書に現在生活している性別を記載した結果、企業から詐欺と言われることもあります。性別、写真を要求されることが苦痛な人にとっては、それを避けることによって業種が限られて就活が困難になるようなケースも少なくありません。

また、面接時にはスーツを着用しますが、スーツはメンズ用とウィメンズ用に分かれており、自分の性に適したスーツが着用できずに就活に苦労するようなケースもあります。

仕事におけるLGBTの課題 ②会社の理解度

LGBTの人権課題について会社の理解度は大きなウエイトを占めていましたが、最近は主に大企業を中心に、LGBTに関する取り組みが行われるようになりました。

中小企業を含めると日本には約400万社近い企業がありますが、その中でも200社以上の大手企業がLGBTフレンドリーの企業となっており、中小企業も含めてLGBT支援の輪が広がっています。

またLGBTフレンドリーと言ってもどんな支援を行っているか見えにくいという課題もありましたが、日本で初めて職場におけるLGBTに関する取り組みを評価する指標の「PRIDE指標」ができたことによって、LGBTフレンドリーの企業がどんな取り組みをしているのかが見えやすくなりました。

PRIDE指標は、企業や団体の各指標の獲得点数によって「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」の3段階で表彰されます。

PRIDE指標の点数は以下の5つの要素によって決まります。

Policy (行動宣言)会社としてLGBTなどの性的マイノリティに関する方針を明文化して、インターネットなどで社内外に広く公開している。
Representation (当事者コミュニティ)LGBTに限らず、従業員が性的マイノリティに関する意見を言える機会を提供している。
Inspiration (啓発活動)従業員に対して、性的マイノリティへの理解を促進するための取り組みをしている。
Development (人事制度・プログラム)人事制度、プログラムがある場合に、婚姻関係の同性パートナーがいることを会社に申請した従業員やその家族にも適用している。
Engagement/Empowerment(社会貢献・渉外活動)LGBTへの社会の理解を促進するために社会貢献活動や渉外活動を行っている。

PRIDE指標が誕生したことによって、「競合する他の同業他社に遅れをとらないよう」という競争意識が生まれて、こうした流れがLGBT支援を加速させています。大企業に関しては、LGBTフレンドリーであることはもちろん、PRIDE指標の最高ランクが当たり前という風潮も広がりつつあります。

こうした風潮は、LGBTの当事者の意識も変えていて、以前は職場でカミングアウトすることに抵抗感を持っていた人が、今は自らカミングアウトするようになる人も増えてきました。

結婚

LGBTの権利問題の1つが結婚に関することです。13組の同性カップルが国を相手に裁判を起こしたのは記憶に新しいところですが、世界では2001年に同性婚を認めたオランダに続いて、異性カップルと変わらない結婚制度を導入している国が増えています。

一方で同性愛を禁止する宗教を信仰する人が多いという理由から、同性婚を認めてない国もいくつかありますが、日本においては宗教的に認められていないわけでもなく、他の国に比べてLGBTに対する風当たりが強いわけでもありません。

そもそもどのような理由で同性婚を法律によって認めなければならないのでしょうか。

憲法上の理由

同性カップルだけでなく、それ以外の人からも同性結婚に賛成や賛同する声が増えていますが、日本国憲法によって同性結婚ができない決まりになっています。

日本国憲法にある、「婚姻は両性の同意に基づいてされるものだ」という文です。

つまり、結婚は両性で行われるものであり、男性と女性のカップルではないと結婚はできないことになるため、同性同士の結婚が法律に違反することになってしまいます。

憲法はすべての国民が平等に尊重される基本的人権がベースになっていて、本来なら同性カップルでも結婚できるようにすべきという声が多くあります。

このような法律の壁が生じてしまったのは、憲法が生まれたときに同性結婚という概念がなかったためです。しかしながら、憲法は簡単に変えることができるものではなく、今でも憲法改正が行われずに同性同士の結婚が法に違反する状態が続いています。

異性愛主義

同性婚のない日本においては、自分は同性が好きかもしれないと気づいた時点で「自分は普通ではないと人間」だと考えてしまいがちです。

人は早くて小学生のころから人を好きになる感情を持つようになり、小学校低学年くらいでも同性が好きということに気付くと自分を責めることもあります。

同性愛者の自分を最初に差別してしまうのは、他の誰でもない自分自身です。このような感覚を持ってしまうのは日本が異性愛主義であり、異性愛が常識や普通になっているためです。

同性愛者の自殺率は異性愛者に比べて6倍も高いと言われているように、自殺を考えたことがある同性愛者は非常に多くいます。

もし、法律によって同性結婚が認められるようになれば、このような常識が覆される大きな期待もあります。

たとえば、結婚が国によって認められると以下のような権利が与えられます。

・土地、遺産、保険金の受け取り
・病院での面会や手術の同意
・葬儀での火葬の参加
・転勤や結婚における企業のサポート

何かあったとしても、婚姻関係にあれば一緒にいることが法的に許容されます。同性カップルは結婚ができないため、これらの権利を法的に与えられることがありません。

恋人が入院しても「家族ではないから」という理由で面会ができないことや、パートナーが亡くなったときに火葬に同席することもできません。

日本における同性婚の代わり

法律によって日本では同性結婚ができませんが、同性婚のない日本において家族としての権利が受けられるように、同性カップルには結婚の代わりになるさまざまな方法を取ってきました。その中でも代表的なものを紹介していきます。

養子縁組制度

同性のカップルが結婚の代わりに行う代表的なものが養子縁組です。カップルのうち、どちらかが親になり、もう一方が子どもになることで親子関係を結び、家族としての権利を受け取るというものです。

養子縁組は、自然な血縁関係のない者投同士の間に法的な親子関係を作る制度で、同性カップルの間に法的な親族関係を作り出すことができます。

養子縁組のメリットには以下のようなものがあります。

・2人で同じ氏名を名乗って同じ戸籍に入る
・2人で一緒に住む家を探しやすくなる
・パートナーの緊急時に医療行為の同意ができる
・パートナーの社会保険の扶養家族に入れる
・パートナーが死亡したときに遺族年金の受給ができる
・パートナーを扶養家族にしてさまざまな控除が受けられる
・パートナーが亡くなったら相続権が与えられる

など、結婚できないデメリットをカバーできる権利がたくさん付与されます。

一方で、法的に認められている夫婦なら、生活費を払わない相手に対して生活の請求権やパートナーを解消する際の財産分与請求権など、法律上の夫婦間で認められている保護を受けることができません。

法的な貞操義務もないため、パートナーが浮気をしたとしても慰謝料を請求することはできません。

そもそも、養子縁組というのは「親子になりたい」という意思に基づいて行われるものであり、結婚したいという同性カップルの意思とは大きく異なっています。役所に届け出するときには深く関係を聞かれるようなことはありませんが、パートナーが亡くなったときにパートナーの親族か養子縁組は無効と訴えられる可能性もあります。

また、将来的に同性結婚が法律で認められた場合にも新しい問題が生じることになります。現在の法律では養子縁組解消した後は、異性同士であっても結婚することはできないことになっています。

もともと親子同士だった2人が結婚できてしまうと、社会秩序が大きく乱れてしまう可能性があるため、法的に親子関係から婚姻関係を結べるようになる可能性は現段階ではかなり低いです。

パートナーシップ制度

パートナーシップ制度とは、法的な効力はないものの同性パートナーに対して結婚していると認める制度です。

パートナーシップ制度は、自治体の取り組みの1つであり、同性パートナーシップ宣誓、パートナーシップ宣誓制度、パートナーシップ制度など、自治体によって呼び方も変わっています。

2015年の11月に東京都の渋谷区と世田谷区で施行されたことをきっかけに、全国的にパートナーシップ制度を導入する自治体が増えています。

パートナーシップ制度は同性向けに作られている制度ですが、これは「法的な権利保障がまったくない同性カップルに対して、せめて証明書だけでも発行して自治体は認めよう」というのが目的で始まったことによります。

パートナーシップ制度が適用になるのは、パートナーシップ制度がある自治体で生活している同性パートナーのみであり、引越しでその場所を離れる場合はパートナーシップが解消されることになります。

また、異性結婚よりも提出書類が多く、認められるまでに時間がかかります。

パートナーシップが認められると、病院での面会や説明、手術の同意や生命保険の受取人になれるなどの権利が与えられる場合もありますが、配偶者控除や遺族年金などは対象外になります。

自治体によって与えられる権利は異なるので、住んでいる自治体のパートナーシップ制度を確認してください。

■海外結婚

同性結婚の方法として、法的に同性婚が認められている国で結婚する、という方法を取る同性カップルもいます。ただし、海外で結婚が認められても日本では認められていないため、権利を施行するためには海外で結婚をしてそこに移住しなければなりません。

もともと海外で生活をしているカップルであれば問題ありませんが、日本を離れて新しい生活をスタートするのであればハードルはかなり高いです。

同性婚に対する反対意見について

最近は同性婚に対して賛成する声が多くありますが、その一方で同性婚に対して反対する声もあります。

このような反対意見が同性婚の進まない一因になっていますが、そもそもどのような理由で同性婚が反対されているのでしょうか。

伝統を破壊するという理由や宗教的な理由は減っているものの、少子化問題を加速させるという理由で同性婚を認めないという声が一定数あります。

同性同士が結婚しても子どもができないため、少子化を加速させてしまうという内容です。しかしながら、同性愛者の人たちが法律によって認められていないからと言って異性と結婚して子どもを作る可能性は低く、同性婚を禁止したからと言って少子化が進まないとは考えにくいです。

それよりも同性婚を認めることによって、代理出産や養子縁組などが増える効果の方が高いと言われています。このような間違った認識を持つ人が多いことも、同性婚が進まない要因の1つになっています。

LGBTが抱える問題、悩み

LGBTの人権問題として、教育・仕事・結婚などがありますが、それ以外にもLGBTが抱える問題や悩みはたくさんあります。

ここではLGBTが抱える問題や悩みを紹介します。

老後

LGBTに対する認知度も高まり、どんどん社会も変化しています。そのような中において、LGBTの暮らしはさらにいいものに向かっていくと考えられますが、家族からの理解がない場合は老後に不安を抱えているLGBTもたくさんいる現状があります。

同性パートナーがいても、家族として遺族年金を受け取ることができない、保険の対象外になるなど不安はたくさんあります。

最近はこのような老後に対して不安を持つLGBTが増えていることから、LGBT就活などの老後生活支援任意団体結成を立ち上げる流れもあります。

たとえば、2019年、アライアンサーズ株式会社は、LGBTを中心に生きにくい事情を抱えている人々に対して、老後生活支援任意団体を立ち上げ、LGBTフレンドリーな医師、社会福祉士、元議員、行政書士など、さまざまな専門家たちが意見を出し合ってサポートをしていきます。

老後に対して漠然とした不安を持っている人の中には、「誰に相談したらいいのか分からない」「何が問題なのか分からない」「何をしたらいいのか分からない」などの悩みを持つ人がたくさんいます。

このような悩みを相談すればアドバイスをもらい、さまざまな対策方法なども教えてもらうこともできます。

LGBTの老後問題として悩んでいる内容として以下のようなものがあります。

・一人暮らしで今後の生活に不安がある
・年老いた両親の世話が不安
・同性パートナーに財産を残したい
・高齢者住宅の選び方が分からない
・医療や病気について不安がある

などです。現在はこのようなサポート、サービスなどは多くありませんが、今後はどんどん増えてくることが予想されています。

トイレ

LGBTが抱える悩みや問題の1つにトイレがあります。実際は、LGBTトイレなど、LGBTと一括りにして、トイレの問題が語られる事が多くありますが、問題の多くは、性自認と体が一致しない、トランスジェンダーが抱えていると言えます。

それは、トイレに悩みを抱える理由は、公共のトイレの多くが男性用と女性用の2つしか選択肢がないためです。セクシュアリティを決める要素の中に性自認という言葉がありますが、性自認とは学術的に男性か女性かという身体的なことだけでなく、自分自身がどのような性であるかどうかを認識している要素です。

たとえば、自分のことを男性と思っているなら性自認は男、自分のことを女性と思っているなら性自認は女になります。

トイレにおける問題は、性自認に基づいてトイレを利用したことによって、周囲の人たちに間違っているのでは、と思われてしまう可能性があることです。他人から見られている性と、性自認が異なっているトランスジェンダーの悩みとしては特に大きく、セクシュアリティとトイレの問題は真剣に考えるべき問題の1つです。

公衆のトイレの中には誰でもトイレがあるので、このトイレを利用すればいいのでは、という声もあります。本来なら誰でも利用できるトイレですが、電車の優先席のように健常な人が利用してはいけないという雰囲気があるため、公衆トイレの利用ができないトランスジェンダーもたくさんいます。

このような状況において、日本にもLGBTの方に安心して利用してもらえるトイレを設置している企業や公共施設などが増えています。また、その一方で、LGBTトイレは、LGBTの人のみが利用するトイレと言ったイメージがついてしまうようになり、逆にセクシャルマイノリティの人が入りにくくなったと言った問題も出てきています。

トイレ利用は人間の尊厳に関わる人権問題であり、利用者の意思に沿う選択肢があります。利用しやすい環境を整えることが重要と言われており、ハード面を整備するだけでなく、研究などを通じて偏見をなくしていく必要性も高い課題です。

ちなみに、職場のトイレ利用を巡っては、戸籍上は男性でありながら女性として生きる経済産業省の職員に対して、女性トイレの使用を制限した国の対応について、違法とする判決が過去に出ています。

メディア

映画でも登場する人物が差別的な発言をすることによって、平然とタブーを犯しているような笑いを狙うこともあれば、当事者本人が誇張して笑いを取りに行くようなこともあります。

マイノリティとコメディは関連づけられることが多く、そうした現状がセクシャルマイノリティはメディアに笑いものにされていると言えます。

ただ、近年はLGBTの悩みや現実をきちんと描いたメディア作品も増えており、カミングアウトする著名人もたくさん増えています。

このようにメディアで活躍する有名人が、LGBTであることを公表することによって、LGBTが笑いや差別の対象ではないという風潮が広がっていくことも期待されています。多様性を認める社会になるためにメディアは重要なポジションにいます。メディアの変革も期待されるところです。

災害

日本は、豪雨・火山・地震などさまざまな災害リスクがある国で、どこに住んでいたとしても災害に巻き込まれる可能性はゼロではありません。

災害に巻き込まれると避難所での暮らしが強いられてしまいますが、災害時の避難所でLGBTのトランスジェンダーが過ごせる環境が整っているのかどうかというのが課題の1つとして挙がっています。

東日本大震災や熊本地震などから、災害とLGBTの問題がクローズアップされるようになりましたが、災害が発生してもLGBTは「家にいたくないけど避難所には行けない」と言う人がたくさんいました。

トイレやお風呂、着替え、名前で呼ばれたときにも、周囲から変な目で見られてしまうというのがもっとも大きな問題です。災害時には誰もがひっ迫した状況にあり、周囲を顧みる余裕がない人がほとんどです。誰もが災害被害者という立場になるため、人権侵害は平常時に比べて起こりやすい状態になっていると言えます。

こうした状況を受けて、地域防災計画や避難所運営マニュアルなどに配慮を盛り込む自治体は増えています。国内で災害時のセクシャルマイノリティの支援が着目されるようになったのは、東日本大震災がきっかけですが、121自治体の調査でセクシャルマイノリティへの配慮を盛り込んでいるのは約30自治体にとどまっています。

LGBT支援に関する内容を地域防災計画に盛り込んだとしても、実際に災害が発生したときにマニュアル通りになるとは言えません。

地域防災計画に盛り込むだけでなく、LGBTが特別なものではなく、自然なものであるという意識を多くの人が持つことの方が重要です。もちろん、こうした取り組みは問題提起の観点からも非常に大切なことだと言えます。

人口に占めるセクシャルマイノリティの割合は、国や地域によって大差がないと言われていて、その社会がどれだけセクシュアリティを受容しているかどうかが重要です。日本においてもセクシャルマイノリティがもっと可視化されるようになれば、災害時のLGBT問題も解消されていく期待があります。

また自治体単位で大きな差が出ているのも、LGBTの災害時における問題の1つです。人権は生きる権利であり、その権利は誰かも奪われるものではありません。国という大きな組織が積極的に動いていくことも重要なことかもしれません。

LGBTと自殺の問題

同性愛者の自殺率は異性愛者に比べてかなり高いと言われています。1999年と2005年に行われたインターネット調査においては、日本のゲイやバイセクシュアル男性全体の65%が自殺を考えたことがあり、15%が自殺未遂をしているという調査結果が出ました。厚生労働省の調査ではゲイ・バイセクシュアル男性の自殺未遂リスクは異性愛者よりも約6倍も高くなっています。

LGBTに自殺が多い理由

自殺率が高い理由は、LGBTが生きにくい社会であることが大きな要因です。周囲と違うという理由からいじめに遭うケースも多く、日常的に偏見や蔑視にさらされることもたくさんあります。

相談できる人が少ない

家族に理解されずに子どもの頃からオカマといじめられることによって自己否定感が染みついてしまい、社会に受け入れられていない孤独感や人生設計を見出すことができずに、将来に希望を持つことができないのも自殺につながる原因の1つです。

LGBT当事者は身近に相談できる人がいないケースがほとんどで、相談する相手が正しいLGBTの情報を持っているかどうか分からないというのも相談しにくい理由となっています。

セクシャルマイノリティは外見から判断することができず、自分と同じような境遇の人を見つけることができにくいのも孤立感を覚えやすい理由となっています。

今でこそネットを使って情報集めができますが、SNSやニュースのコメントなどはネガティブな存在も多くあり、そのような情報に目が触れて心にダメージを受ける場合もあります。

差別的な言動に直面する機会が多くある

何気なく日常を過ごしていても、LGBTに対する差別的言動や行動は何度もあります。特に多いのはマイクロアグレッションと呼ばれる差別のタイプで、「悪意のない小さな差別的言動や行動のこと」を意味します。

LGBTに関する問題については明らかに差別とは判断しにくいものでありつつ、相手を傷つけてしまう可能性がある恐ろしい差別の一種です。これは差別にあたるのかと問題になったときに、悪意の有無が論点になるシーンは日常生活においてたくさんあります。

しかし、悪意を持って差別している人は少なく、人を傷つけているという自覚症状がない場合がほとんどです。社会的マイノリティの人たちが受けている日常的な会話の中に潜んでいて、知らず知らずに使っている表現がマイクロアグレッションです。

マイクロアグレッション(英語: Microaggression)とは、何気ない日常の中で行われる言動に現れる偏見や差別に基づく見下しや侮辱のこと。

Wikipedia-マイクロアグレッション

たとえば、

・テレビやメディアで同性愛は気持ち悪いという情報が流れる
・レズ、ホモだと思われると差別用語で、ネガティブな会話を受ける
・男なのに声が高いと笑いにされる

などがあります。このような言動や行動は、たとえ自分に向けられている悪意ではなくても、意識的に差別されていると思ってしまい、自己肯定感の低さを生んでしまいます。そんな生活を幼少期からずっと経験していると、自分は存在してはいけないという感覚を持ってしまうわけです。

大人になっても生きづらい現状がある

LGBTに対するアンケートの中で「就職のときに困難に感じましたか?」という問いに対してレズビアン、ゲイ、バイセクシャルの44%が非常に難しかったと回答しています。

以前に比べるとLGBTに対する理解を深めると言った取り組みは増えていますが、LGBT研修を積極的に取り入れている会社は多くなく、カミングアウトしたことによって出世できないようなケースも少なくありません。

NPO法人の虹色ダイバーシティが調査を行ったところ、LGBTは一般より転職率が高いことが知られています。

カミングアウトが受け入れられないケース

自分がLGBTであると勇気を出してカミングアウトしても、他人から受け入れられないことやアウティングされる人は少なくありません。

このような経験がトラウマになり、生きる希望を失って自殺につながるケースも少なくありません。運よく受け入れられたりしても、カミングアウトは1回だけでなく、新しい人に出会うたびに続きます。

何度も何度もカミングアウトしていく中で、すべての人が同じような反応をするわけではありません。そもそも「自分自身がなぜカミングアウトをしなければならないのか」「伝えなければならないことなのか」と疑問に思う気持ちも出てきます。

カミングアウトをするという風潮そのものが間違っていると言えますし、また、カミングアウトをする辛さや心の負担を周囲の人に理解してもらえないのも大きな問題の1つです。

LGBTの自殺対策

LGBTの自殺率に関する研究は、政府が策定する自殺総合対策大綱にも大きな影響を与えて有識者や議員、いのちリスペクト、ホワイトリボン、キャンペーン当事者団体などが協力して、この研究を似って各方面に働きかけました。

日本においては2012年に民主党内に性的マイノリティ小委員会が設けられ、2013年には自民党内に性的マイノリティに関する課題を考える会が結成されるなど、対策が次第に始まりつつあります。

世界におけるLGBTの人権問題や歴史について

LGBTの支援や取り組みなどは、日本だけでなく世界各国で行われています。国によって歴史が異なるため、取り組みもさまざまです。ここでは世界におけるLGBTの人権問題や歴史について一部を紹介します。

アメリカ

LGBTだけでなく、さまざまな社会運動のイメージがあるアメリカですが、ゲイ解放運動やウーマン・リブなど、人権に関する社会運動のスタートは、ほとんどがアメリカと言っても過言ではありません。

1969年にアメリカでは同性同士の性行為を禁止する法律が施行され、その法律とゲイに対する偏見や警戒から警察官はゲイバーに抜き打ち捜査を行うことが多くありました。

ある日、ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン (Stonewall Inn)」で、人気歌手の追悼式をしていましたが、大事な追悼式の最中に不正捜査が行われ、バーにいた同性愛者たちは反発するして、また、バーにいた人だけでなく、外から集まってきた人も巻き込まれて、大きな反乱事件になりました。

これは「ストーンウォール事件」と呼ばれていますが、これから1年後に、この事件の一周年を記念したデモやパレードが行われて、このパレードには5000人が参加したと言われています。これをきっかけに、日本でも毎年4月にプライド・パレードが行われることになりました。

ちなみに、今でこそLGBTという言葉が生まれて、セクシャルマイノリティの種類ごとに名前がつけられていますが、当時はすべてのセクシャルマイノリティを一括りにしてゲイと呼んでいました。

ゲイパレードが広まって女性解放運動が始まったことによって、女性であるゲイが独立でレズビアン運動やフェミニズム運動を先導していきました。

中国

中国は根強い儒教国家で、儒教は親子と兄弟の血液を重視する宗教であることから、血をつなげない同性愛者は強く嫌悪されてきました。中国でも同性愛が犯罪、そして病気とみなされていた歴史があり、1984年に流氓(りゅうぼう)罪が制定されて男性同士の性行為も犯罪とされました。

中国の精神疾患の診断基準であるCCMDの1989年に発表された第二版においては、同性愛は治療が必要となる病気であるという内容が組まれて、2001年のCCMD第三版で同性愛者の一部が脱病理化されるまで続いています。

このような状況において、1983年に中国で初めての性別適合手術が行われましたが、1989年に前述の第一回香港レズビアン&ゲイ映画際が行われて「同士」という言葉が生まれました。

この頃から少しずつLGBT運動が始まりますが、その大きなきっかけになったのは1995年に北京で行われた世界女性会議です。当時の中国ではLGBTは資本主義の思想の産物であり、国内には存在しないと考えられていました。そのうえ、これまでに行われていた中国のLGBTをめぐる議論は専門家主導で公衆衛生の観点からくるものでした。

しかし、世界女性会議とNGOフォーラムによって中国のレズビアンは国際社会に触れて、レズビアン当事者が自分たちでグループを作るNGOを知ることになります。レズビアンやライツは公衆衛生の観点だけでなく、人権の観点から語られるようになりました。

2009年には上海でLGBTパレードが行われて、2013年には長沙でも開催されるなど運動はどんどん広がっていきます。単なるLGBT当事者団体ではなく、LGBTのDVやLGBTと学校など、組織される団体も多様化しました。

このように中国でもLGBT運動は行われていますが、LGBTパレードの主催者はその後に拘留され、フェミニストの逮捕、メディアの運動に対する報道規制など、現在においてもバックラッシュが激しい状態が続いています。

台湾

台湾においては1987年まで戒厳令が敷かれており、閉鎖的な雰囲気の中でLGBTたちもずっと息をひそめていました。

しかし、1990年代に入ると台湾の戒厳令は解除されて民主化が達成されることになります。それに伴って、これまでになかった女性解放運動や、セクシャルマイノリティ人権運動などが活発になり始めます。

大学においてもゲイサークルやレズビアンサークルなどができて、2003年には台湾初のパレードが開催されるなど急速に運動が活発化していった歴史があります。

このような状況を受けてマイノリティの権利を守る法律が次々に成立しますが、2001年には就職における平等を保障する性別工作平等法のもとである両性工作平等法、その後に教育における平等を保障する性別教育平等法などが成立しました。

同性婚の成立の動きについても2000年の初めころから始まっており、2001年や2006年には立法には至らなかったものの、同性婚を盛り込んだ法案が提出されています。

また、2017年に同性同士の結婚を認めない民法は違憲であると判断して、その後に行われた国民投票においては同性婚反対派が多数を占めることになり、同性婚は民法の改正ではなく、特別法の措置によって2019年に法制化されることになりました。

このような流れを見ても台湾は先進的であり、時代の流れに沿った対応をしていることが分かります。LGBT支援で一目置かれていることもあり、台湾から学ぶことはたくさんありあります。

LGBTに関するダイバーシティ

ダイバーシティは、LGBT関連のニュースや取り組みなどでよく見かける言葉です。日本語で多様性を意味する言葉で、国際社会において当然の権利として確立されていますが、日本においては社会に浸透しているとは言いにくいです。

ここでは、ダイバーシティの意味を詳しく解説していきます。

ダイバーシティとは?

ダイバーシティの言葉の意味は、

・多様
・相違
・他種多様

などの意味があり、個人や集団の間に存在している違いと言った意味になります。もっとかみ砕いていくと個性です。

たとえば、

・年齢
・国籍
・学歴
・人種
・宗教
・性的指向
・性自認

などの違いを認めるだけでなく、これらを積極的に労働市場に採用、活用していこうというのがダイバーシティの概念になります。

ダイバーシティはもともとアメリカにあるマイノリティや、女性が差別を受けない採用活動や公正な処遇の実現を求める運動から広がったもので、日本社会においては、人権や少子高齢化によって引き起こされる労働力人口減少に対応できる人材を確保することにつながりました。

現在においては、人種や宗教、価値観、性別、障碍者、ライフスタイルと言った観点のダイバーシティが日本の企業において広がりつつあります。

日本におけるダイバーシティの現状

ダイバーシティは日本だけでなく、海外でも急速に浸透して定着しています。

2019年12月に世界経済フォーラムにおいて発表された情報では、日本は世界153カ国中の中で日本は121位と史上最低指数となりました。

この結果から日本においてはダイバーシティが実態として根付いてないことが分かります。

上位の国は、年齢や性別、生い立ちに関係なく、能力がある人はその能力を発揮できる社会の実現をしています。日本もこのような多様性の捉え方が進んできていますが、さまざまな物事の判断において過去に取り残されている側面もあります。

日本でダイバーシティが急務とされている理由

ダイバーシティの取り組みは、今後の日本企業において必要性の高いものと言われています。

ダイバーシティが急務と言われているのは、

・少子高齢化
・グローバル化
・働き方の多様性

の3つが関係しています。

日本の少子高齢化は急速に進んでいますが、総人口は2008年をピークに減少しています。この傾向はどんどん続いて、2040年には人口が約6000万人まで減少すると予想がされています。

年々企業が求める人材が不足していくと予想されているので、女性や高齢者など多様な人材を活用するダイバーシティの推進が必要になると考えられています。

また、ビジネスのグローバル化に伴い、日本企業が業務拡大を推進するにあたって、ダイバーシティの取り組みはより重要になります。さまざまな文化的背景の価値観を持っている人材を活かすことは、多様な顧客とのやりとりや取り込みを可能にします。

さらに近年では年功賃金や終身雇用などの日本的雇用慣行が変化しており、特に若年層においては、

・自己の能力を活かしてフリーランスになりたい
・仕事と家庭を両立するためにアルバイトやパートとして働きたい
・キャリアアップのために転職したい

など雇用に対する意識や価値観が大きく変わりつつあります。このように働き方が多様化していることも、企業側がモチベーション向上やニーズに応えることが重要視されています。

ダイバーシティ2.0とは?

ダイバーシティ2.0とは、多様な人材を活かして、それぞれの能力を最大限に引き出して付加価値を生み続ける企業経営の取り組みを指しています。

2016年にダイバーシティ2.0検討会が立ち上がり、2017年にダイバーシティ経営を実践するための企業のためのガイドラインが作成されました。2018年4月には検討会が再会して、2018年には改訂版も公表されています。

このような指標が生まれたことによって、企業の具体的なダイバーシティへの取り組みが可視化されて、会社同士の競争心理も高まっています。

SOGI(ソジ)とは?LGBTとの違いについて

セクシャルマイノリティを指す言葉としてLGBTが一般的に使用されてきましたが、最近はLGBTに代わってSOGIという言葉が使用されるケースが増えています。

SOGIとは、Sexual Orientation and Gender Identityの頭文字で、「どんな性別を好きになるのか」「自分自身をどういう性だと認識しているのか」と言った意味があり、属性に関わらず平等に扱うと言った意味で使われています。

SOGIという言葉を使用することによって、自分の好きになる性はどんなものか、自分の性をどんな風に認識しているか、など性にまつわることはすべての人に関係するということが分かります。

気をつけて欲しいのは、LGBT=SOGIというわけではないことです。LGBTは特定の身体的性、性自認、性的指向を持つ人の呼び名である一方、SOGIはすべての人の属性を表しています。

すべての人に関係するもの、言い換えれば、人ごとにしないという概念としてSOGIは浸透しつつありますが、SOGIに関するハラスメントについてSOGIハラと呼ぶことも増えてきました。

SOGIという言葉が生まれたのは、LGBTという枠に収まりきらない、さまざまな性のあり方があることが提起されるようになったことが理由としてあります。性的マイノリティは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなどにとどまりません。

LGBTに代わって使われるようになったのがSOGIで、LGBT以外のマイノリティも性的マジョリティーであるヘテロセクシュアルやシスジェンダーなども含まれています。

ヘテロセクシュアル異性に対して性的な感情を抱くセクシュアリティ
シスジェンダー生まれたときの性別と自分で認識している性(性自認)が一致している状態や人のこと

LGBTの認知度が高まるにつれて、企業のセクシャルマイノリティへの差別はSOGIハラと呼ばれるようになり、トランスジェンダーに配慮しなかったり、同性愛であることの噂を流したりするような行為もSOGIハラになります。

新しい言葉が生まれることによって、人はこれまでよりも言葉に気を付けるようになります。以前はマタハラやパタハラなどの言葉はありませんでしたが、言葉が広く認知されるようになったことで当事者に対する理解が深まりました。

言葉そのものを耳にする機会が増えたのは最近ですが、この言葉自体は2011年頃から国際社会において広く使用されるようになり、日本でも2015年頃から使用されています。

SOGIはLGBTに変わる名称ではないため、SOGIの人という言い方は間違っています。SOGIに関するマイノリティやSOGIに関する差別の解消などが正しい名称です。また、一部ではSOGIEと表記されることもありますが、EはGender Expression(性表現)のEになります。

日本政府によるLGBT差別への対応

国際人権機関は、日本の現状に対して性的指向および性自認を含む、あらゆる理由に基づく差別を禁止する包括的な反差別法を採択して、差別の被害者に、実効的で適切な救済を与えるべきと指摘しています。

2017年の勧告では、

・包括的差別禁止法の制定
・ヘイトスピーチの規制に性的指向、性自認を含めること
・性同一障碍者特例法の改正をすること
・同性パートナーシップの法的補償を実現すること

などの対応を日本政府に求めています。

このような勧告を受けて、日本政府も、LGBTやセクシャルマイノリティの差別解消に向けてさまざまな取り組みを開始することになりました。企業や自治体はすでに独自のLGBT支援を行っていることからも分かるように、組織が大きくなればなるほどLGBT差別の対応は遅くなっています。

たとえば、2018年に野党は「LGBT差別解消法」を提出し、与党は「LGBT理解増進法」を提出しています。

どちらの意見も賛否が別れていますが、重要な事はどちらが正しくて、どちらが正しいくない、という考え方ではなく、両方の観点から問題解決をしていく、という繊細な考察が必要であると思います。

LGBT支援のいらない社会が必要

LGBTの人権に関する歴史は長く、さまざまな問題と向かいながら今日に至ります。

教育、職場、自治体などでもLGBTのサポートが増えていますが、それに対してLGBT支援はいらない、放っておいた方がいいと言った意見もたくさんあります。多様性があたりまえに受け入れられる社会であるのが自然であり、個性があるからこそ新しいものが生まれていくのです。

LGBT差別禁止制度や、LGBTフレンドリーなどの言葉を耳にする機会が多くありますが、LGBTの人権を守るために行われていることであったとしても、その言葉がある限りは、マジョリティとマイノリティという分断が行われています。

LGBT当事者の中には、セクシャルマイノリティによって生き方を制限されてしまっている人、平等な権利が与えられていない人、自分を偽りながら生きることを余儀なくされている人がたくさん存在しています。

性的指向や性自認によってこのような行動が制限されなくなった時、そしてLGBTという言葉が使用されなくなった時に、LGBTの支援が必要なくなったと言えるのでしょう。

もちろん、LGBTフレンドリーやLGBT支援をしている企業や自治体が間違っているわけではなく、長い歴史の中で積み上げられてきた同性愛への差別や憎悪などを無視して改革することはできません。LGBTの歴史を知るという意味でも、LGBTという言葉を今すぐ無くすわけにはいけません。

最近はユーチューバー、フリーランスなど、個性を生かした働き方に世の中がシフトしつつあります。このような世の中の流れにおいて、LGBTは強みだという考え方も出来ると思います。

まとめ

世界的にLGBTは差別されてきた歴史がありますが、LGBTの人権問題が叫ばれるようになり、LGBTを支援する動きや差別解消などの法案も生まれ、確実にこれまでよりも良い方向に向かっています。

また社会の変化に伴って、自分がLGBTであることを公言する芸能人や政治家なども増えており、LGBTは個性の1つであると、少しずつ浸透してきています。LGBTであることは今の時代、全く珍しいことではありません。

人権の定義は人によって異なりますが、「人が自由に生きて、誰からも自由を侵害されないこと」が人権ではないでしょうか。

今はいろいろな手段で自分らしく自由に生きることができます。実際に活き活きとライフスタイルを送っているLGBTもたくさんいます。

自分を大切にして、自由に自分らしく生きることが大切です。