「デイヴィッド・マチソン」、この名前を知っている人はいるだろうか?LGBTの歴史に詳しい人なら知っている人もいるだろう。
モルモン教徒の彼は、自然の摂理にゲイは反するとして、「ゲイ矯正治療」を推進してきた1人である。そんな彼が、何と自分自身もゲイであるとカミングアウトしたのだ。
ゲイ矯正治療とは?
そもそもゲイ矯正治療とは、どんな治療法なのか?
治療は、何段階かに分けて行われるのが一般的である。第一段階で行うのは、人間としての脱構築だ。不安な感情を連想させて、問題行動を抑える治療法で、嫌がらせやショック療法、ときには身体的虐待を伴う場合もある。
一種のマインドコントロールとも言えるだろう。第一段階をクリアしたら、もともと持っている人格は傷つけられ、治療者の思うような人物に作り上げられている。すべてをリセットし、食事の方法や話し方、歩き方、服装、呼吸法など、1から学習しなおしていく。
簡単にまとめるとこうだ。
「ゲイ矯正治療とは、ゲイであることに嫌悪感を抱かせ、自分自身を否定し、強引に新しい人格を作っていく。」
心理的な負担は当然大きく、ゲイ矯正治療を通じて自殺してしまう人も少なくない。こうした治療を問題視する声も多く、国家レベルで禁止しようという国も出てきている。
ゲイ矯正治療を推進してきたデイヴィッド・マチソンに対する風当たりも冷たくなっているのが現状だ。
デイヴィッド・マチソンがLGBTに与えた衝撃の大きさ
「ゲイ矯正治療を行ってきたデイヴィッド・マチソン自身がゲイだった」、つまり治療者もゲイである自分を隠してきた1人だったのだ。
そして自身のカミングアウトと共に、これまでのゲイ矯正治療は間違いだったと認めている。弱い立場にある人の人間性を放棄させるために、罪悪感や恥を感じさせる行為で明らかな詐欺だったとも言っている。
今も、自身が広めてきたゲイ矯正治療の撤廃を訴えてきている。彼も加害者でありながら、被害者でもあるのかもしれない。