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知っておきたい!ゲイ・バイセクシャルのためのエイズ/HIVの基礎知識

ゲイ・バイセクシャルが抱える悩みの一つにエイズ/HIVの感染があります。

この記事では、ゲイ・バイセクシャルがエイズ/HIVに罹患するリスクはどれくらいあるのか、どんなことに気を付けたらいいのかなどをまとめています。

エイズ/HIVとは

HIVとは、ヒト免疫不全ウイルスの頭文字を取ったものでウイルスの名称になります。

HIVとエイズを混合している方もいるかもしれませんが、HIVに感染して発症するとエイズになります。エイズに該当するのは、HIVに感染した人が免疫力の低下によって指定されている23の合併症のいずれかを発症した状態です。

HIVに感染して治療をせずにいると、免疫力がどんどん低下して数年から10年ほどで健康な人なら影響がないような菌やウイルスでさまざまな病気が引き起こされます。

エイズ/HIVの歴史

エイズ/HIVの歴史は浅く、1930年にアフリカ熱帯地方でチンパンジーの狩猟を行う男性がサルから感染したことが起源とされています。

1959年にコンゴ民主共和国で死亡した男性が最初のエイズ患者であったとされていますが、これが分かったのは後に保存していた血液を検査してからです。

1981年に男性同性愛者でのカリニ肺炎の多発が世界的に報告されるようになり、全世界にエイズへの警報が発せられることにあります。年末までに120人以上が原因不明の病気で死亡し、1982年には5大陸すべてにおいてエイズ患者が確認されることになります。

このようにエイズが世界的に広がったきっかけの1つが男性同性愛者ということから、ゲイやバイセクシャル=エイズ/HIVの感染リスクが高いというイメージが定着することになりました。

1983年には男女間の性行為におけるエイズの感染が確認され、1985年には日本でも初めてのエイズ患者が確認されました。

HIVの感染経路

エイズは通常の環境においては非常に弱いウイルスであり、一般に普通の社会生活をしている分には感染者と生活をしても感染することはありません。一般に感染源になるだけのウイルス濃度をもっている体液は血液、精液、膣分泌液、母乳などがあります。

また、感染しやすい部位としては粘膜、傷、切創などであり、傷のない皮膚から侵入することはできません。よってエイズの感染経路は「性的感染」「血液感染」「母子感染」の3つが中心です。それぞれの感染経路について詳しく見ていきましょう。

性的感染

性行為による感染では、性分泌液に接触することが主な原因になります。通常の性行為では女性は精液が膣粘膜に接触してHIVが侵入することによって感染しますが、男性の場合は性行為によって亀頭に見えない小さな傷が生まれて、そこからHIVが侵入することによって起こります。

そのため、性行為だけでなく性器同士を合わせるような行為によってもHIVに感染するリスクがあります。

また肛門性交においては腸粘膜に精液が接触して感染しますが、腸の粘膜は一層であることから薄くHIVが侵入しやすくなっています。そのため、男女間の性行為に比べると男性同士の性行為による感染リスクの方が高くなっています。

口腔プレイについても口腔内にある微小な傷からHIVが侵入するケースもあります。

血液感染

感染者の血液が傷、輸血、麻薬などのうち回しにより、血液中に侵入することによって感染することがあります。特に麻薬、覚せい剤の注射器や注射針の使いまわしは感染率が特に高くなっています。

以前は輸血や血液製剤の感染が中心でしたが、今はすべての血液が事前に検査されているため、感染のリスクは非常に小さくなっています。

ただし、医療現場においては針刺しの事故によって感染するリスクもあり、完全に血液感染のリスクが減ったわけではありません。

母子感染

母子感染の経路には以下の3パターンがあります。

・出産時の産道感染
・母乳の感染
・妊娠中の胎児感染

出産時の感染は産道出血で血液を子どもが浴びることによって起こりますが、感染を避ける方法として帝王切開があります。

母乳による感染も認められていて、HIVに感染した母親が母乳を与えることはハイリスクとされており、粉ミルクを代用することで感染リスクを減らせます。

胎内感染については胎盤を通じて子宮内で感染しますが、物理的な遮断ができないことからもっとも感染リスクが高くなっています。

エイズ/HIVの治療について

「エイズ/HIV=必ず死に至る」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

エイズ/HIVが世の中に出てきた頃は不治の病として恐れられ、罹患してしまうと死を待つしかない病気でした。

そもそもエイズで死に至るのはHIVが免疫機能を破壊して、さまざまな病気に罹患しやすくなることが原因です。HIVそのものが直接死をもたらすわけではありません。

現在は1996年に開発された抗HIV薬によってウイルスを完全に除去することはできないものの、血液検査において測れないほどのウイルス量に抑えることが可能になっています。

エイズ/HIVには以下のように3つの段階があります。

① 急性期
② 無症候期
③ エイズ発症期

急性期とは感染したばかりの時期で熱が出るケースもありますが、症状が一切でない人もいます。それから10年ほどは症状が出ない時期が続きますが、気付かないうちに免疫機能が破壊されて、その後にエイズ発症時期を迎えます。

エイズ発症時期の前にHIV薬を使った治療を始めるわけですが、全員が抗HIV薬を使用するのではなく、症状を起こす少し前に服用を始めます。

このように早期からHIVの感染が分かっていれば、適切な治療を行ってエイズの発症を遅らせることができます。

しかし、日本にはHIV感染に罹患していることに気付かず、エイズの症状が出てからHIVに罹患していることが分かるケースも多くあります。

HIVの検査は簡単に受けられる

HIVの感染不安がある方は、検査を受けることをおすすめします。

HIVの検査自体はとても簡単で、採血検査で一般の医療機関や保健所で受けることができます。保健所なら無料で、さらに匿名で受けることもできます。

検査では最初にスクリーニング検査を行い、検査は感染者をもらさないためにできるだけひっかけるようにしているので、感染していなくても0.3%の人は陽性と診断されます。

このタイミングで陽性になった人が確認検査をしますが、2回目の検査で陽性になったらHIVに感染していると診断されます。

中にはHIVの検査をするのが恥ずかしい、人にバレたら困るという人もいるでしょう。

保健所でHIVの検査をする場合、無料・匿名で受けられるため、誰にも検査を受けていることを知られる心配がありません。

検査を受けるタイミングについては、感染の有無をはっきりさせたいときは、感染の可能性がある機会から3か月が経過したタイミングで検査をして陰性と診断されるとHIVに感染してないと考えられます。

感染のことが心配な場合、3か月以内であっても検査することで1つの目安として判断することもできます。

ゲイのエイズ/HIV予防について

ゲイのエイズ/HIV感染の原因は主に性行為です。特にアナルセックスについては性行為の中でも感染リスクが高くなっているので、ハッテン場や売り専などのサービスを利用する場合は十分に注意しなければなりません。

エイズ/HIVの感染リスクを減らす方法としてセーファーセックスがあります。

売り専やハッテン場の中にはセーファーセックスを推奨しているところも多く、このようなお店を利用すれば感染リスクは抑えられます。

セーファーセックスとは、セックスのときに性感染症のリスクを減少させる行動を取る方法になります。完全にリスクを減らせるわけではないため、セーフではなくセーファーという言葉が使用されています。

セーファーセックスの事例として以下の2つがあります。

・アナルセックスではコンドームを着用する
・口の中に精液や血液を入れない

特にコンドームの着用については他の性感染症を防ぐ意味でも推奨されていますが、行為中にゴムが破れてしまうケースや劣化したものを気付かずに使ってしまうこともあるので完全に防げるとは限りません。

コンドームの使用においては信頼できる製品を使用期限内に正しい用法で使用することが推奨されます。また、オーラルセックスにおいてもコンドームの着用が望ましいです。

エイズ/HIVの感染者が抱える問題

エイズは1981年に世界で初めて症例が発見されてから、世界中に広がり現在は3000万人を超えるHIV陽性者がいます。

当初は治療法がなく報道でも病気の恐ろしさが強調されて伝えられていましたが、人々の間に生じた誤解や偏見からHIV感染を理由に職場への採用が取り消されたり、医療機関で差別的な対応や診察拒否をされたり、さまざまな人権侵害が起こりました。

現在はHIV感染が日常生活で感染するリスクはほとんどないとされており、せきやくしゃみなどで感染することもありません。エイズについてさまざまなことが分かってきていますが、当時の偏見や差別はそのまま残っている現状があります。

ゲイやバイセクシャルのHIV感染対策の脆弱性は、社会におけるセクシャリティに対する偏見や差別などが主な要因となっています。20年をかけてゲイNGOやボランティアによってHIV感染対策に取り組み体制が作られてきましたが、これらの活動への支援対策は十分とは言えません。

しかし、HIVが世の中に広がっている現状を考えると、その活動の継続が今後も望まれるところです。1人1人がHIVに対する正しい知識を持つ、間違った認識によって人権侵害をしない取り組みも必要不可欠と言えるでしょう。

まとめ

ゲイ・バイセクシャルのためのエイズ/HIVの基礎知識を紹介してきました。ゲイやバイセクシャルに感染者が多いイメージのあるエイズ/HIVですが、同性愛者でなくても性行為によって罹患するリスクは十分にあります。

しかし、ゲイ・バイセクシャルの性行為によってエイズ/HIVの感染リスクが高まるのは事実です。感染リスクを減らすためにも、セーファーセックスを心がけて、正しい知識を持ちましょう。