東芝が2020年より[量子暗号通信]を用いたビジネスを始める。次世代の暗号技術をアメリカで実用する予定で、実現すれば日本企業としては初めてのことだ。
インターネットではさまざまなデータが暗号化されているが、計算能力が高い量子コンピューターが本格的に使用されるようになると、今の暗号では簡単に解読されてしまう恐れがある。東芝は量子を使った暗号技術「量子暗号通信」をアメリカで実用化する方針を決めた。
金融や医療、政府関連など秘匿性の高い情報のやり取りが求められるシーンでの実用化が想定されているが、市場のメジャーシェアを取っていきたいと東芝のプロジェクトマネージャーは意気込んでいる。
■量子暗号通信とは?
量子暗号通信とは、光の粒子である光子を使用した通信技術で、やり取りするデータの暗号化や元に戻す複合に使用するカギの情報を光子に載せて送る。光子は光の最小単位でこれ以上分割できず、不正に読み取ろうとすると状態が変化する特徴がある。盗もうとした痕跡が残ってしまうため、情報漏洩が防げるという仕組みだ。
東芝は1991年にイギリスにケンブリッジ研究所を設立して、量子暗号の基礎研究を長らく続けてきた。この研究成果をベースに日本で実用化を推進しているが、2020年には東北大学と共同で世界初、ヒトの遺伝子情報を解析したゲノム配列データを送ることに成功している。
■量子コンピューター時代に必須
東芝が量子暗号の実用化に踏み切る理由は、量子コンピューターの台頭だ。カナダのスタートアップ企業、Dウェーブシステムズが11年に量子コンピューターを超える性能を独自開発の量子コンピューターを実証したと発表した。
量子コンピューターの登場によって脆弱性が増してしまうのは暗号技術になる。普及している暗号技術は短時間で解くことができない数学の問題がベースになっているため、量子コンピューターを使用すると、簡単に解読されてしまうリスクがあるわけだ。こうした背景もあり、量子暗号通信に力を入れている。