2019年9月14日の早朝に、サウジアラビア東部州のブカイクとヒジュラにある石油会社の石油施設に攻撃があった。攻撃によって大規模火災が発生し、その影響を受けて日量570万バレルの石油生産が停止してしまった。この量は1日の生産量の60%に該当している。
今回、攻撃を受けた石油施設はサウジの中でも重要な石油施設が集まっている場所だった。石油施設への攻撃は原油価格にも大きな影響をもたらし、米WTI原油先物が15%超高の1バレル63.34ドルまで急伸した。
ただし、サウジに十分な石油の在庫があったことや9月末までに石油施設が復旧するとの見通しが発表されたことで原油価格はスピーディーに落ち着いた。
露呈した防御力の弱さ
原油価格が落ち着いたのはとりあえず一安心だが、今回の攻撃によってサウジの石油施設の防御力の弱さが露呈してしまった。サウジでは石油施設に対する警戒は厳重に行っており、2006年にはアルカイダがアブカイクを襲撃する事件もあったが、大きな被害は出なかった。
このときは地上やミサイルによる攻撃が中心だったが、今回の襲撃はドローンによるものである。ドローンによる攻撃は多少なりとも想定されていたが、十分に対処できなかったことが被害を受けた大きな原因だろう。
戦争回避の流れに?
今回の事件はサウジの攻撃に対するイエメン軍の自衛の報復と位置付けられている。攻撃に用いられたのはイラン製の武器ではなく、自国で開発した国で作った武器というのも印象的だ。イランは政治的にイエメンを支援しているだけであり、悪いのはサウジや米国だと主張している。
イランからも戦争になっても仕方ないという声が出ているが、上層部では戦争回避に向けた声も多く出始めている。緊迫する中東情勢だが、日本は静観のスタンスを取っている。
イランを名指ししていた欧州も軍事オプションには慎重な姿勢を見せており、武力衝突回避の方向でまとまりつつある。中東情勢は日本経済にも影響を与えることから、今後の動向に注意が必要だ。